iPhoneのマイナンバーカード：デジタル社会の新たな一歩

iPhoneのマイナンバーカード：デジタル社会の新たな一歩

はじめに

2025年6月24日、iPhoneにマイナンバーカードの機能が搭載されるサービス「iPhoneのマイナンバーカード」が開始された。これにより、物理的なマイナンバーカードを持ち歩くことなく、iPhoneだけで行政手続きや本人確認が可能になり、デジタル社会の利便性が飛躍的に向上する。マイナンバーカードは、日本に住民票を持つ全ての人に割り振られる12桁の番号を基盤とした身分証明書であり、すでに1億人以上が保有している。このカードの機能をスマートフォンに統合することで、日常生活のさまざまなシーンでスムーズな手続きが期待される。本記事では、iPhoneのマイナンバーカード対応の概要、利用方法、メリットと課題、そして今後の展望について詳しく解説する。

概要：iPhoneのマイナンバーカードとは

iPhoneのマイナンバーカードは、マイナンバーカードの電子証明書機能と属性証明機能をApple Walletに搭載するサービスである。電子証明書機能は、オンラインでの本人確認や電子署名を可能にするもので、マイナポータルへのログインや行政サービスの利用に活用される。属性証明機能は、氏名、住所、生年月日、性別、顔写真、マイナンバーなどのカード券面情報をデジタル化し、対面での本人確認や年齢確認に使用できる。これにより、物理カードと同等の効力を持つデジタル版マイナンバーカードがiPhone内に保存される。

このサービスは、デジタル庁とAppleの協力により実現し、Apple Walletの身分証明書機能を米国外で初めて展開する事例となった。対応機種はiOS 17.4以降が動作するiPhoneで、具体的にはiPhone XR/XS以降やiPhone SE（第2世代以降）が対象となる。セキュリティ面では、iPhoneのセキュアエンクレーブと呼ばれる高度な保護領域に情報が保存され、Face IDやTouch IDによる生体認証でアクセスが保護される。

利用方法：登録と実際の使い方

iPhoneにマイナンバーカードを登録するには、以下の手順が必要である。

• マイナポータルアプリをApp Storeからインストールする。

• 実物のマイナンバーカードを用意する。

• iPhoneのNFC機能を使ってカードを読み取り、券面入力用暗証番号（4桁の数字）と署名用パスワード（英数字6～16文字）を入力する。

• Apple Walletにマイナンバーカードが追加され、利用可能になる。

登録後は、Apple Walletを開き、マイナンバーカードを選択することで各種サービスを利用できる。例えば、マイナポータルへのログインでは、Face IDやTouch IDで認証するだけで、薬の記録確認、医療費の確認、引越し手続き、確定申告などが可能になる。また、コンビニエンスストアのマルチコピー機で住民票や印鑑登録証明書を取得する際も、iPhoneをカードリーダーにタッチするだけで手続きが完了する。

2025年7月には、デジタル庁が提供する「マイナンバーカード対面確認アプリ」のiOS版がアップデートされ、iPhone内のマイナンバーカードを使った対面での本人確認にも対応する予定である。これにより、金融機関での取引、携帯電話の契約、中古品の買取など、さまざまな場面でiPhoneが身分証明書として機能する。

メリット：生活を便利にするポイント

iPhoneのマイナンバーカード対応には、以下のようなメリットがある。

• 物理カードの持ち運びが不要：マイナンバーカードを自宅に置いたまま、iPhoneだけで手続きが完結する。

• スムーズな認証：生体認証により、暗証番号の入力やカードの読み取りが不要になり、操作が簡単になる。

• 多様な利用シーン：行政手続きだけでなく、コンビニでの証明書発行や対面での本人確認にも対応する。

• セキュリティの高さ：Apple Walletは、クレジットカード情報などを安全に保管してきた実績があり、セキュアエンクレーブによる暗号化で情報漏洩のリスクを最小限に抑える。

• 広範な対応機種：最新のiPhoneだけでなく、比較的古いモデル（iPhone XR以降）でも利用可能であるため、幅広いユーザーが恩恵を受けられる。

特に、コンビニでの証明書取得は、セブン-イレブンなどのマルチコピー機がすでにiPhone対応を準備済みであり、日常的な利用が容易である。また、2025年9月以降には、一部の医療機関でマイナ保険証としての利用も開始される予定で、病院受付での保険資格確認がiPhoneだけで行えるようになる。

課題と注意点：セキュリティと普及へのハードル

一方で、iPhoneのマイナンバーカード対応にはいくつかの課題と注意点が存在する。

• セキュリティ意識の必要性：iPhoneの紛失や盗難時には、「探す」アプリを使ってリモートでロックやデータ消去が可能だが、ユーザーは定期的にセキュリティ設定を確認し、最新のiOSにアップデートする必要がある。

• 電子証明書の失効手続き：機種変更や端末の売却時には、マイナポータルアプリから電子証明書を失効させる必要がある。失効せずに端末を初期化してもデータが残る可能性があり、適切な手続きが求められる。

• 通信環境への依存：オフラインでの利用は可能だが、一部のサービスではインターネット接続が必要な場合がある。通信障害時の対処方法は、今後の課題として残る。

• 普及の壁：Androidでは2023年5月から電子証明書機能が利用可能だが、属性証明機能はまだ未対応である。iPhoneユーザーが約半数を占める日本市場において、iPhone対応は普及を加速させる可能性があるが、Androidとの機能差や医療機関の対応準備が追いつくかが鍵となる。

また、海外企業であるAppleのシステムに公的情報を依存することに対し、一部のユーザーから不安の声も上がっている。デジタル庁は、情報漏洩の懸念は低いとし、Appleのセキュリティ実績を強調しているが、ユーザー教育と透明な情報開示が求められる。

今後の展望：マイナ保険証とさらなる展開

iPhoneのマイナンバーカードは、行政手続きや本人確認のデジタル化を加速させる第一歩であるが、今後の展開にも注目が集まる。特に、マイナ保険証としての利用は大きな期待を寄せられている。2025年7月から一部の医療機関で実証実験が始まり、9月以降に既存のカードリーダーにアタッチメントを付ける形で運用が開始される予定である。これにより、病院や薬局での保険資格確認がiPhoneだけで可能になり、医療分野でのデジタル化が進む。

さらに、デジタル庁はコンビニエンスストアでの活用を拡大する計画を進めている。例えば、セルフレジでの酒やたばこの購入時に、iPhoneのマイナンバーカードで年齢確認を行うデモンストレーションが実施されており、将来的に無人化や省人化に貢献する可能性がある。また、特定の情報（例：20歳以上かどうか）だけを提供する機能の実装も検討されており、プライバシー保護の観点からも期待される。

一方、運転免許証の搭載については、マイナンバーカードとは異なる仕組みが必要なため、現時点では実現していない。ただし、政府はモバイル免許証の早期導入を目指しており、警察庁と連携して検討が進められている。将来的には、iPhoneがマイナンバーカード、保険証、免許証を一元管理する「デジタルウォレット」として機能する可能性もある。

結論

iPhoneのマイナンバーカード対応は、デジタル社会における利便性と安全性を両立させる画期的な取り組みである。Apple Walletを活用したスムーズな認証、広範な利用シーン、高いセキュリティにより、行政手続きや日常生活が大きく変わる可能性を秘めている。一方で、セキュリティ意識の向上や普及に向けた課題も残されており、ユーザーと政府の双方による努力が必要である。2025年6月24日のサービス開始を機に、iPhoneがデジタル社会のパスポートとしてどのように浸透していくのか、その動向に注目したい。マイナンバーカードをiPhoneに登録することで、スマートフォン一つで生活がより便利になる未来が、すぐそこまで来ている。