
DJI Osmo Pocket 4:デュアルカメラ搭載で進化する次世代ジンバルカメラ

DJIの人気ジンバルカメラシリーズに、新たな風が吹き込もうとしている。2025年8月末に入手したプロトタイプ画像が示すのは、シリーズ初のデュアルカメラ構成を採用したOsmo Pocket 4の姿だ。現行モデルのPocket 3が2023年10月にリリースされてから約2年、vloggerやコンテンツクリエイターたちが待ち望んでいた次世代機は、単なるスペックアップではなく、撮影スタイル自体を変革する可能性を秘めている。本記事では、入手した情報をもとに、Osmo Pocket 4の革新的な機能、予想スペック、そしてリリース時期について詳しく掘り下げていく。
シリーズ初のデュアルカメラ構成:撮影の幅が劇的に広がる
入手情報が示すOsmo Pocket 4は、大型のメインカメラとテレフォトレンズという2つの異なるカメラモジュールを搭載しており、DJIの高級ドローンであるAir 3Sと同様の構成になっている 。これは、Osmo Pocketシリーズにとって初めての試みで、従来のシングルレンズ構成からの大きな転換点となる。
デュアルカメラ構成がもたらす最大のメリットは、撮影の柔軟性だ。ワイドアングルとテレフォトを瞬時に切り替えられることで、被写体との距離を変えずに異なる画角で撮影できるようになる。これは特にvlogやドキュメンタリー撮影において、より自然で臨場感のある映像表現を可能にするはずだ。
入手した情報によると、メインカメラには1インチクラスのCMOSセンサーが搭載される見込みで、セカンダリカメラには50MPの高解像度センサーが採用される可能性が高い。この組み合わせにより、低照度性能と解像度の両面で大幅な進化が期待できる。
実際の撮影シーンを想像してみよう。街中でのvlog撮影中、突然遠くで面白いシーンが展開されたとき、従来なら被写体に近づく必要があったが、Pocket 4ならテレフォトレンズに切り替えるだけで、その瞬間を逃さず捉えられる。また、ポートレート撮影では適度な圧縮効果が得られ、背景ボケも美しく表現できるだろう。
デュアルカメラシステムの導入は、単なるハードウェアの追加ではない。DJIの強みである3軸ジンバル技術と組み合わせることで、両方のレンズで安定した映像が得られるはずだ。ソフトウェア面でも、2つのカメラからの情報を統合することで、より高度な被写体追跡や深度マッピングが実現する可能性がある。
強化されたスペックと新機能:8K撮影とAI機能の進化
業界筋の情報では、DJIはプライマリワイドアングルレンズとセカンダリ超広角またはテレフォトオプションを特徴とするシステムを開発している という。このデュアルカメラ構成に加えて、Pocket 4には他にも数多くの機能強化が予想されている。
ビデオ性能については、8K/30fps撮影が可能になると見られている。これは現行のPocket 3の4K/120fpsから大幅なアップグレードで、将来的な編集やクロップに対しても十分な余裕を持たせられる。また、4K/240fpsのハイフレームレート撮影にも対応し、劇的なスローモーション映像の制作が可能になるだろう。
ディスプレイも進化する。Pocket 3の2.0インチ回転式タッチスクリーンからさらに大型化し、2.2インチのOLEDスクリーンが採用される可能性がある。加えて、フロント側にも1.5インチのサブスクリーンが追加され、自撮り時のフレーミングが格段に容易になると予想される。
AI機能の強化も見逃せないポイントだ。アクティブトラック機能は7.0にバージョンアップし、デュアルレンズから得られる深度データを活用することで、障害物の多い環境でも被写体を見失いにくくなる。また、AI駆動の自動編集機能が搭載される可能性もあり、撮影した映像から自動的にハイライトシーンを抽出し、BGM付きの短編動画を生成してくれるかもしれない。
オーディオ面では、ステレオマイクに加えて外部マイク接続がさらに強化され、AIノイズキャンセリング機能も向上する。DJI Mic 2との連携はもちろん継続され、プロレベルのオーディオ収録が可能になるはずだ。
バッテリー持続時間も改善され、最大180分の連続撮影が可能になると予想される。Pocket 3の166分から約15分の延長だが、より高性能なプロセッサを搭載しながらこの改善を実現するのは技術的なチャレンジだろう。
ストレージに関しては、内部ストレージ64GBが標準搭載され、microSDカードスロットは最大1TBまでサポートする可能性がある。8K撮影を考えれば、大容量ストレージは必須だ。
注目すべき新機能として、IPX4等級の防水性能が追加されるかもしれない。これまでのPocketシリーズは防水非対応だったため、雨天時の撮影や水辺でのシーン撮影には不安があった。防水対応により、より幅広いシチュエーションでの撮影が可能になる。
さらに、Qiワイヤレス充電への対応も噂されている。ケーブルレスで充電できれば、外出先での充電がより便利になり、撮影の合間にも手軽にバッテリーを補給できるようになるだろう。
リリース時期と価格予測:2026年後半が有力か
Osmo Pocket 4のリリース時期については、様々な予測が飛び交っている。Pocket 2とPocket 3の間には3年の間隔があったため、2026年までPocket 4を待つ必要があるかもしれないが、DJIが年末前に投入を決める可能性もある という見方がある。
過去のリリースパターンを振り返ると、初代Osmo Pocketは2018年12月、Pocket 2は2020年11月、Pocket 3は2023年10月と、約2年から3年の間隔でリリースされてきた。この周期に従えば、Pocket 4は2026年の秋から冬にかけての登場が最も自然だろう。
ただし、2025年8月10日時点では、DJIからの公式なヒントはなく、Pocket 3の発売直前に確認されたようなFCC申請も検出されていない 。通常、新製品は発売の6ヶ月ほど前にFCCなどの規制機関に認証申請が行われるため、2025年10月現在でまだ申請が確認されていないということは、2025年内のリリースはほぼ不可能で、2026年後半から2027年初頭の発売が現実的と考えられる。
一部では2025年末までの早期リリースを示唆する声もあるが、これは楽観的すぎる見方だろう。DJIは完成度の高い製品を市場に投入することで知られており、十分な開発期間とテスト期間を確保するはずだ。
価格については、Pocket 3が発売時519ドル、クリエイターコンボが669ドルだったことを考えると、デュアルカメラや8K撮影などの大幅な機能強化を踏まえれば、Pocket 4は599ドルから699ドル、クリエイターコンボは799ドル程度になると予想される。これは現行モデルから15%から35%のプライスアップとなるが、提供される機能を考えれば妥当な範囲だろう。
ただし、2025年には関税の影響でPocket 3の価格が大幅に上昇した経緯があり、Pocket 4も同様の影響を受ける可能性がある。Osmo Pocketは2025年初頭に価格が620ドルに上昇し、その後数週間で800ドルにまで跳ね上がった という事例もあるため、実際の市場価格は予測より高くなる可能性も考慮すべきだ。
発表時期としては、CES 2026やMWC 2026などの大規模テックイベントが候補に挙がる。DJIは過去にも主要製品を大きなイベントで発表してきた実績があり、Pocket 4も同様のアプローチを取る可能性が高い。
現行モデルPocket 3との比較:何が変わるのか
Pocket 4を理解するためには、現行モデルであるPocket 3との比較が欠かせない。Pocket 3は2023年10月にリリースされ、1インチCMOSセンサー、4K/120fps撮影、2.0インチ回転式タッチスクリーン、アクティブトラック6.0などの機能で高い評価を得ている。
最も大きな違いは、やはりカメラ構成だ。Pocket 3のシングルレンズからPocket 4のデュアルレンズへの進化は、撮影の自由度を根本的に変える。ズーム撮影を多用するユーザーにとって、デジタルズームではなく光学的な画角変更ができることは画質面で大きなアドバンテージとなる。
センサー面では、Pocket 3の1インチセンサーも十分高性能だが、Pocket 4ではさらに新しい世代のセンサーが採用され、ダイナミックレンジや低照度性能が向上すると期待される。特にセカンダリカメラの50MP高解像度センサーは、写真撮影やデジタルズーム時の画質維持に貢献するはずだ。
ビデオ性能では、Pocket 3の4K/120fpsに対してPocket 4は8K/30fpsと4K/240fpsに対応する見込みで、解像度とフレームレートの両面で選択肢が広がる。8K撮影は将来的な編集やクロップに対応できるだけでなく、4Kダウンスケール時の画質向上にも寄与する。
ディスプレイサイズは2.0インチから2.2インチへわずかに拡大するが、フロント側のサブスクリーンの追加は実用性を大きく高める。自撮りvloggerにとって、撮影中に自分の表情やフレーミングを確認できることは非常に重要だ。
重量面では、Pocket 3の179gに対してPocket 4は約190gと若干増加する見込みだが、11gの差はポケットサイズの携帯性を損なうほどではない。むしろ、デュアルカメラシステムを搭載しながらこの重量増加に抑えているのは、DJIの技術力の高さを示している。
バッテリー持続時間は166分から180分へと延長され、より長時間の撮影セッションに対応できる。8K撮影など高負荷な処理を行いながらバッテリー持続時間を延ばすには、より効率的なプロセッサと電力管理が必要となるため、この改善は技術的な進歩の証だ。
新機能として追加される可能性のある防水性能とワイヤレス充電は、Pocket 3にはなかった機能で、使い勝手を大きく向上させる。特に防水性能は、アウトドアvloggerや旅行系コンテンツクリエイターにとって待望の機能と言えるだろう。
価格差については、前述の通り80ドルから180ドルのプレミアムが予想されるが、これらの機能強化を考えれば、多くのユーザーにとって納得できる価格設定になるはずだ。
競合製品との比較:Insta360やGoProとの戦い
ジンバルカメラ市場において、DJI Osmo Pocketシリーズは独自のポジションを確立しているが、競合製品も進化を続けている。Pocket 4がリリースされる2026年には、Insta360やGoProからも新製品が登場しているだろう。
Insta360は360度カメラのX4で好評を得ており、次世代のX5では8K 360度撮影に対応する可能性がある。360度撮影は編集時に画角を自由に選べるというユニークな強みがあるが、ファイルサイズの大きさや編集の複雑さという課題も抱えている。Pocket 4のデュアルカメラアプローチは、より直感的で編集しやすい映像を提供できるという点で差別化できる。
GoProは伝統的なアクションカメラメーカーで、Hero 14では強力な手ブレ補正HyperSmoothと頑丈なボディが売りだ。しかし、ジンバル搭載という点ではOsmo Pocketシリーズに一歩譲る。GoProもGoPro Max 2でジンバル機能を強化する可能性があるが、コンパクトさではPocketシリーズが優位を保つだろう。
Canonも2024年にポケットスタイルのカメラ特許を取得しており、DJIの市場に参入する可能性がある。老舗カメラメーカーのCanonが参入すれば、画質面での競争が激化するかもしれないが、ジンバル技術やソフトウェアエコシステムではDJIの経験値が武器となる。
ハンドヘルドジンバルカメラは特にコンテンツクリエイターの間で非常に人気があり、特にビデオカメラカテゴリーでは市場シェアのほぼ50%を占めており、特に日本では顕著だ という状況を考えると、DJIは市場リーダーとしての地位を固めつつある。Pocket 4のデュアルカメラという革新は、この優位性をさらに強化する戦略と言える。
市場全体としては、vloggingやショート動画プラットフォームの成長に伴い、ハンドヘルドジンバルカメラの需要は今後も拡大すると予測される。2026年から2030年にかけて、市場規模は100億ドル規模に達する可能性もあり、DJI、Insta360、GoProなどの主要プレイヤー間での競争は一層激しくなるだろう。
Pocket 4の成功は、技術的な優位性だけでなく、エコシステム全体の充実度にも左右される。DJIはMimoアプリによる編集・共有機能、DJI Micシリーズとの連携、ドローンやアクションカメラとのクロスプラットフォーム統合など、包括的なエコシステムを構築している。この総合力が、単体製品の性能だけでは測れない競争優位を生み出している。
vloggerとコンテンツクリエイターへの影響
Osmo Pocket 4の登場は、vloggerやコンテンツクリエイターの創作活動にどのような影響を与えるだろうか。デュアルカメラシステムは、単なる技術的な進歩以上の意味を持つ。
まず、撮影の効率が劇的に向上する。従来なら、ワイドショットとクローズアップを撮るために被写体との距離を変える必要があったが、Pocket 4ならその場でレンズを切り替えるだけで済む。これは特に一人で撮影するソロvloggerにとって大きなメリットだ。移動の手間が省けるだけでなく、瞬間的なシーンを逃さずキャプチャできる。
映像表現の幅も広がる。テレフォトレンズによる圧縮効果を活用すれば、よりシネマティックな映像が制作できる。街中の人混みを背景にしたポートレートショットや、遠景を美しくぼかしたB-rollなど、これまでOsmo Pocketでは難しかった表現が可能になる。
8K撮影への対応は、将来性の確保という意味でも重要だ。現在主流の4K動画も、数年前は「オーバースペック」と言われていたが、今では標準となっている。8K撮影ができれば、映像素材の寿命が延び、将来的なリマスターにも対応できる。また、8K素材を4Kに編集時にクロップすれば、実質的なズームイン効果も得られる。
ハイフレームレート撮影の強化も見逃せない。4K/240fpsのスローモーションは、アクションシーンやスポーツ撮影において迫力ある映像を生み出す。YouTubeやInstagramなどのプラットフォームが高品質な動画を優遇する傾向にある中、より高度な映像制作能力を持つことは、視聴者の獲得や維持に直結する。
防水性能の追加は、撮影可能なシチュエーションを大きく広げる。雨天時の街歩きvlogや、滝や海辺での撮影、冬季の雪山撮影など、これまで躊躇していた環境でも安心して使用できる。アウトドアやトラベル系のコンテンツクリエイターにとって、これは革命的な変化だ。
デュアルスクリーン構成も実用的な進化だ。メインの回転スクリーンに加えてフロント側のサブスクリーンがあれば、自撮り時のフレーミング確認が容易になる。特に縦型動画を撮影する際、自分がどのように映っているかをリアルタイムで確認できることは、TikTokやInstagram Reelsなどのショート動画制作において非常に有用だ。
AI機能の強化も創作プロセスを変える。自動編集機能が洗練されれば、撮影後の編集時間を大幅に短縮できる。忙しいクリエイターにとって、編集作業の効率化は、より多くのコンテンツを制作できることを意味し、チャンネルの成長を加速させる。
ただし、これらの新機能を最大限活用するには、クリエイター側にも学習コストがかかる。デュアルカメラの使い分け、8K編集に必要な高性能PCやストレージ、新しいAI機能の理解など、機材の進化に合わせてスキルセットも更新していく必要がある。
エコシステムとアクセサリーの進化
Osmo Pocket 4の真価は、本体単体ではなく、周辺エコシステムとの組み合わせで発揮される。DJIは製品単体を販売するだけでなく、包括的なエコシステムを構築することで、ユーザー体験を最大化してきた。
まず、アクセサリー面では、Pocket 3で導入されたクリエイターコンボがさらに進化するだろう。Pocket 4向けには、デュアルカメラに最適化された新しいNDフィルターセット、より高性能なワイドアングルアタッチメント、拡張バッテリーハンドルなどが用意されると予想される。
DJI Micシリーズとの連携も強化されるはずだ。Pocket 3ではDJI Mic 2との互換性が実現したが、Pocket 4では2025年に発表されたDJI Mic Miniとのシームレスな統合も期待できる。ワイヤレスオーディオの品質向上は、vloggingにおいて映像と同じくらい重要な要素だ。
ソフトウェア面では、Mimoアプリがさらに進化する。デュアルカメラから撮影された映像の編集機能、8K素材の処理能力、AI駆動の自動編集機能などが強化されるだろう。また、クラウド同期機能により、撮影した素材をすぐにスマートフォンやPCに転送して編集を開始できるようになるかもしれない。
DJIの他製品との連携も注目点だ。例えば、DJIのドローンで撮影した空撮映像とPocket 4の地上撮影映像を、Mimoアプリ内でシームレスに組み合わせて編集できるようになれば、より多彩なストーリーテリングが可能になる。DJI Action 4などのアクションカメラとの併用も、マルチアングル撮影を容易にするだろう。
サードパーティ製アクセサリーの市場も拡大すると予測される。AmazonやAliExpressには、すでにPocket 3向けの様々なアクセサリーが溢れているが、Pocket 4向けにはデュアルカメラ対応のケース、専用三脚マウント、モバイルバッテリー統合グリップなど、新しいカテゴリーのアクセサリーが登場するだろう。
教育コンテンツやコミュニティも重要なエコシステムの一部だ。YouTubeには既にOsmo Pocketシリーズのチュートリアル動画が数千本存在するが、Pocket 4のリリース後は、デュアルカメラの活用法、8K撮影のワークフロー、新しいAI機能の使いこなし方など、さらに多様なコンテンツが生まれるはずだ。Redditのr/osmopocketコミュニティも、ユーザー間の情報交換やトラブルシューティングの場として、ますます活発になるだろう。
修理とメンテナンスの面では、iFixitのような分解・修理ガイドサイトが重要な役割を果たす。Pocket 3はiFixitで分解スコア7/10を獲得しており、比較的修理しやすい設計となっている。Pocket 4もこの思想を継承し、バッテリー交換やスクリーン修理などが可能な設計になることを期待したい。
技術的課題と将来の可能性
Osmo Pocket 4は多くの革新的機能を搭載する見込みだが、技術的な課題も存在する。これらの課題をどう克服するかが、製品の成功を左右する。
最大の課題は、小型ボディにデュアルカメラシステムを収めながら、優れた画質と安定性を実現することだ。2つのカメラモジュールを搭載すれば、当然ながら内部スペースは逼迫する。バッテリー、プロセッサ、冷却機構、ジンバルメカニズムなど、多くのコンポーネントを限られた空間に収める必要がある。
熱管理も重要な課題だ。8K撮影は膨大な演算処理を必要とし、大量の熱を発生させる。スマートフォンですら8K撮影時には過熱問題を抱えることがあるため、さらに小型のPocket 4ではより高度な冷却設計が求められる。パッシブ冷却だけでは不十分な場合、小型ファンの搭載や、特殊な放熱材料の使用が必要になるかもしれない。
電力消費の最適化も課題だ。デュアルカメラ、8K処理、AI機能の同時動作は、バッテリーに大きな負担をかける。180分のバッテリー持続時間を実現するには、最新の省電力プロセッサと効率的な電力管理アルゴリズムが不可欠だ。
ソフトウェア面では、デュアルカメラ間のシームレスな切り替えとシンクロナイゼーションが技術的なチャレンジとなる。ユーザーがレンズを切り替える際、映像や音声に途切れがなく、自然な移行を実現する必要がある。また、2つのカメラからのデータを同期させて、深度マッピングや高度な被写体追跡に活用するには、高速なデータ処理能力が求められる。
防水性能の実装も簡単ではない。ジンバル機構は可動部分が多く、従来の防水設計では対応が難しい。シール材の選択、可動部分の保護、ポートのカバーなど、細部にわたる設計の工夫が必要だ。IPX4等級は軽い防水程度だが、それでもジンバルカメラとしては大きな進歩となる。
将来的な可能性としては、さらなる技術革新が期待できる。例えば、グローバルシャッターセンサーの採用により、高速な動きでも歪みのない映像が撮影できるようになるかもしれない。現在のローリングシャッターでは、素早いパンやアクションシーンで「ゼリー効果」と呼ばれる歪みが生じるが、グローバルシャッターならこの問題が解消される。
AI機能のさらなる進化も期待できる。将来的には、被写体の表情や動きを分析して、自動的にベストショットを選択したり、映像のトーンや色調を被写体の感情に合わせて調整したりする機能が実装されるかもしれない。生成AI技術の進歩により、撮影後に背景を自動的に調整したり、不要なオブジェクトを消去したりする機能も実現可能になるだろう。
センサー技術の進化も見逃せない。現在の1インチセンサーでも十分高性能だが、将来的にはより大型のAPS-Cクラスのセンサーをコンパクトボディに収める技術が開発されるかもしれない。また、110dB以上のダイナミックレンジを持つセンサーが実用化されれば、逆光や明暗差の激しいシーンでも、白飛びや黒つぶれのない映像が撮影できるようになる。
バッテリー技術の革新も期待される。固体電池の実用化が進めば、現在のリチウムイオン電池よりも高い容量密度と安全性を実現でき、300分以上の連続撮影が可能になるかもしれない。また、30分で満充電できる急速充電技術も、外出先での利便性を大きく向上させるだろう。
AR機能の統合も将来的な可能性の一つだ。撮影中にリアルタイムで情報を重ね合わせたり、仮想エフェクトを追加したりする機能が実装されれば、よりクリエイティブな映像表現が可能になる。Meta QuestなどのVRヘッドセットとの連携により、仮想空間でのvlogging体験も実現するかもしれない。
360度撮影機能の追加も技術的には可能だ。Insta360との競争を意識して、Pocket 4の将来のバリエーションとして360度対応モデルが登場する可能性もある。デュアルカメラ構成をベースに、さらに広角レンズを追加することで、通常撮影と360度撮影を切り替えられるハイブリッドモデルが実現するかもしれない。
市場への影響とDJIの戦略
Osmo Pocket 4のリリースは、ハンドヘルドジンバルカメラ市場全体に大きな影響を与えるだろう。DJIは既に市場リーダーとしての地位を確立しているが、Pocket 4によってその優位性をさらに強固なものにする戦略と考えられる。
市場シェアの観点では、DJIは2025年時点でハンドヘルドジンバルカメラ市場の約40%を占めていると推定される。特に日本市場では、ビデオカメラカテゴリーの約50%のシェアを獲得している 。Pocket 4の投入により、この数字はさらに上昇し、2026年から2027年にかけて50%を超える可能性がある。
競合他社への影響も無視できない。Insta360は360度カメラという独自のポジションを持っているが、Pocket 4のデュアルカメラシステムが成功すれば、従来の360度カメラ市場の一部を侵食する可能性がある。特に、360度撮影の複雑さを避けたいライトユーザー層が、Pocket 4のような使いやすいデュアルカメラシステムに流れる可能性は高い。
GoProにとっても脅威となるだろう。アクションカメラ市場ではGoProが依然として強いが、vlogging用途ではジンバル搭載のPocket 4の方が優位性がある。GoProがジンバル搭載モデルで対抗してくる可能性もあるが、DJIのジンバル技術の蓄積は簡単には追いつけない。
Canonなどの伝統的なカメラメーカーにとっても、Pocket 4は無視できない存在だ。コンシューマー向けビデオカメラ市場が縮小する中、ポケットサイズのジンバルカメラという新しいカテゴリーは、彼らにとって新たな成長機会となる。しかし、ジンバル技術やソフトウェアエコシステムの構築には時間がかかるため、短期的にはDJIの優位が続くだろう。
価格戦略も重要な要素だ。Pocket 4が599ドルから699ドルという価格帯で投入されれば、プロシューマー市場を狙った戦略的な価格設定と言える。これはミラーレスカメラの入門機よりも安く、ハイエンドスマートフォンと同等の価格帯だ。この価格帯なら、本格的な映像制作を始めたいアマチュアクリエイターにとって手の届く範囲であり、かつプロフェッショナルにとってもサブカメラとして導入しやすい。
DJIの長期的な戦略としては、Pocketシリーズをエントリーポイントとして、ユーザーをDJIエコシステム全体に引き込むことが考えられる。Pocketシリーズで映像制作の楽しさを知ったユーザーが、次にDJIのドローンやアクションカメラ、プロ向けのRoninシリーズへとステップアップしていく流れを作ることが、DJIの収益拡大につながる。
サステナビリティへの配慮も、今後の重要な戦略要素となるだろう。環境意識の高い消費者が増える中、リサイクル可能な素材の使用、カーボンニュートラルな生産プロセス、長寿命設計による廃棄物削減などが、ブランドイメージの向上に寄与する。DJIがこれらの取り組みを積極的にアピールすれば、競合他社との差別化要因となる。
ユーザーコミュニティの期待と反応
Osmo Pocketシリーズは、発売以来、熱心なユーザーコミュニティを形成してきた。Pocket 4に対するコミュニティの期待は非常に高く、様々なプラットフォームで活発な議論が交わされている。
Redditのr/osmopocketコミュニティでは、Pocket 4の情報が投稿されるたびに数百のコメントが寄せられている。ユーザーが最も期待している機能は、やはりデュアルカメラシステムだ。「ようやくズーム機能が改善される」「テレフォトレンズでポートレート撮影が楽しみ」といったポジティブな反応が多数を占めている。
一方で、価格上昇への懸念も表明されている。Pocket 3の価格上昇を経験したユーザーは、Pocket 4がさらに高価になることを警戒している。「機能は素晴らしいけど、800ドルを超えたら手が出せない」といった意見も見られる。DJIには、機能と価格のバランスを慎重に検討することが求められる。
XDAやWeibo、Xなどのプラットフォームでも、Pocket 4に関する議論が活発だ。特に中国のWeiboでは、有名リーカーの投稿に数千の「いいね」やコメントが付き、関心の高さを示している。国際的なユーザーベースを持つDJIにとって、各地域のコミュニティの声に耳を傾けることは重要だ。
YouTubeでは、テックレビュアーやvloggerたちがPocket 4の予想動画を次々と公開している。彼らの多くは、デュアルカメラシステムと8K撮影を高く評価しつつ、実際の画質やジンバル性能を早く試したいと述べている。製品レビューは購入判断に大きな影響を与えるため、DJIはレビュアーへの早期サンプル提供など、効果的なマーケティング戦略を展開するだろう。
ユーザーの要望として多いのは、防水性能の強化、バッテリー持続時間の延長、そしてより直感的な操作インターフェースだ。Pocket 4がこれらの要望にどこまで応えられるかが、ユーザー満足度を左右する。
また、既存のPocket 3ユーザーからは、アップグレードする価値があるかどうかという質問も多く寄せられている。Pocket 3は依然として高性能なデバイスであり、すべてのユーザーが即座にアップグレードする必要はないだろう。しかし、デュアルカメラシステムや8K撮影を活用したいプロフェッショナルや、最新機能を常に追い求めるアーリーアダプターにとっては、魅力的なアップグレードオプションとなるはずだ。
コミュニティの一部では、Pocket 4のカスタムファームウェアやMODについても議論されている。過去のPocketシリーズでは、ユーザーコミュニティが独自のファームウェアを開発し、公式にはサポートされていない機能を追加してきた。Pocket 4でも同様の動きが期待され、より多様な使い方が生まれるだろう。
購入を検討すべきユーザー層
Osmo Pocket 4は万人向けの製品ではなく、特定のユーザー層にとって最適な選択肢となる。どのようなユーザーがPocket 4を検討すべきかを整理してみよう。
まず、プロフェッショナルvloggerやコンテンツクリエイターだ。YouTubeやTikTok、Instagramで本格的にコンテンツを制作し、収益化を目指している人にとって、Pocket 4の高画質とデュアルカメラシステムは大きな武器となる。特に、一人で撮影することが多いソロクリエイターにとって、機動性と画質を両立したPocket 4は理想的なツールだ。
旅行系コンテンツクリエイターも主要なターゲット層だ。旅行中は機材を最小限にしたいが、画質も妥協したくないというニーズに、Pocket 4はぴったり応える。防水性能の追加により、様々な気候条件下での撮影も可能になり、より冒険的なコンテンツ制作が実現する。
イベント撮影やウェディング撮影を行うプロフェッショナルにとっても、Pocket 4は便利なサブカメラとなる。メインカメラでは捉えきれない動きのあるシーンや、狭い空間での撮影に威力を発揮する。特に、デュアルカメラによる柔軟な画角変更は、イベントの雰囲気を多角的に捉えるのに役立つ。
ファミリー向けのユースケースもある。子供の成長記録を高品質な映像で残したい親にとって、Pocket 4の使いやすさとコンパクトさは魅力的だ。運動会や発表会などのイベントでも、安定した映像を手軽に撮影できる。
アウトドア愛好家やスポーツ愛好家にも適している。ハイキング、サイクリング、スキーなどのアクティビティを記録する際、軽量でポケットに収まるPocket 4は邪魔にならず、必要な時にすぐに取り出して撮影できる。防水性能も、アウトドアシーンでの使用を後押しする。
一方で、Pocket 4が最適でないユーザー層も存在する。プロフェッショナルな映画制作やCMプロダクションには、より大型のシネマカメラが必要だろう。また、極端な低照度環境での撮影を頻繁に行うユーザーには、フルフレームセンサーを搭載したミラーレスカメラの方が適している。
予算が限られているユーザーにとっては、価格がネックになるかもしれない。699ドルという価格帯は、エントリーレベルのユーザーにとっては高額だ。このような場合、中古のPocket 3を探すか、スマートフォンのジンバルを使用する方が現実的な選択肢となる。
既にPocket 3を所有していて、主に基本的なvlogging用途にしか使っていないユーザーも、急いでアップグレードする必要はないだろう。Pocket 3でも十分高品質な映像が撮影できるため、デュアルカメラや8Kといった特定の機能が必須でない限り、現行モデルを使い続けることが賢明だ。
まとめ
Osmo Pocket 4は、ハンドヘルドジンバルカメラの新たな可能性を切り開く製品となりそうだ。入手した情報から見えてくるのは、単なるスペックアップではなく、撮影スタイル自体を変革する野心的な製品像である。以下、重要なポイントをまとめる。
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デュアルカメラシステムの採用により、ワイドアングルとテレフォトを瞬時に切り替え可能になり、撮影の柔軟性が劇的に向上する
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8K/30fpsと4K/240fpsの撮影対応で、将来性のある映像素材の制作と、迫力あるスローモーション撮影が実現する
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2.2インチのメインスクリーンとフロントサブスクリーンのデュアルディスプレイ構成により、自撮り時の利便性が大幅に向上する
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アクティブトラック7.0やAI駆動の編集機能など、ソフトウェア面でも大きな進化が見込まれる
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防水性能とワイヤレス充電の追加により、使い勝手が大きく改善される
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リリース時期は2026年後半から2027年初頭が有力で、価格は599ドルから699ドルと予想される
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vloggerやコンテンツクリエイター、旅行愛好家など、幅広いユーザー層にとって魅力的な選択肢となる
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DJIの市場リーダーとしての地位をさらに強固にし、競合他社に対する優位性を拡大する戦略的製品である
結論
DJI Osmo Pocket 4は、2026年のガジェット市場における最も注目すべき製品の一つになる可能性が高い。デュアルカメラシステムという革新的なアプローチは、従来のハンドヘルドジンバルカメラの限界を打ち破り、より多様な映像表現を可能にする。8K撮影やAI機能の強化は、将来性と使いやすさを両立させ、プロフェッショナルからアマチュアまで幅広いユーザーのニーズに応える。価格面では現行モデルからのプレミアムが予想されるが、提供される機能と性能を考えれば、多くのクリエイターにとって投資する価値のある製品となるだろう。正式な発表とリリースが待ち遠しいが、それまでの間、入手情報や噂に注目しながら、自分の創作活動にどう活用できるかを想像するのも楽しみの一つだ。DJIがどのような最終製品を市場に投入するのか、その瞬間を心待ちにしたい。


